今回は、営業活動における「クロージング」の正しいやり方、コツについて解説していきます。
あなたは日々の営業において、「反応は良かったのに成約まで至らなかった」「営業成約率がなかなか上がらない」といった経験はありませんか?
もしそうだとしたらクロージングをしていないか、やり方が間違っているのかもしれません。
実はクロージングにはコツがあり、それを意識している営業と意識していない営業では成約率に大きな違いが出てしまいます。
本記事ではクロージングのとコツを10個紹介していきますので、ぜひ参考にしてあなたの営業活動にお役立てください。
クロージングについて
クロージング(Closing)とはビジネス用語で、営業活動における顧客との「契約締結」や「契約までの流れ」を意味します。
営業段階で顧客と親密にトークが出来て良い信頼関係を築けたとしても、このクロージングをおろそかにしていては成約までの道は遠のいてしまいます。
クロージングの成約率を高めるためには、顧客の心理をしっかりと理解しておくことです。
良いクロージングができないと成約率は下がる
あなたがどれだけ良い商品やサービスを紹介していても、正しい方法でクロージングできなければ成約率を下げてしまいます。
なぜなら世の中には、同じような商品、同じようなサービス、同じような競合他社で溢れています。またそれだけでなく顧客はそれらの情報をいつでも取得できてしまいます。
つまりサービスを欲している消費者は、数多くの選択肢を取れる状態なのです。
仮に営業活動がうまくいき、顧客が購入したいという気持ちになっていたとしても、契約に至るまでの方法を間違えてしまえばそこで顧客の熱は冷めてしまいます。
鉄は熱いうちに打てといいますが、顧客の購買意欲(鉄)が高まった時に、適切なクロージング(打つ)するのです。
商談は「顧客へのヒアリング→不安や疑問点の洗い出し→解決方法の提案→クロージング」と進めていくのが理想的です。
クロージングのタイミングを間違えると「押し売り」のようになってしまうのでそこは注意が必要です。
クロージングとは購入の後押しである
そもそもなぜクロージングを行う必要があるのかというと、顧客は購入の後押しが欲しいからです。
それが大きな買い物であればあるほど、顧客は深層心理で「本当に購入していいのか?」という状態になっています。
だから、クロージングでそっと後押しをしてあげるのです。
正しくクロージングをおこなえば、購買意欲の後押し、商品購入の機会損失を防ぐ、という効果が見込めて目に見えるかたちで営業での成果を得られます。
クロージングで顧客と営業がWin-Winとなる
クロージングは、なにも営業側の利益だけを追求したものではありません。良いクロージングが出来ると営業・顧客双方の利益にもつながります。
ここで一つの例を出しましょう。
あなたには、現在使っていない家があり不動産屋に相談に行ったとします。そして相談した結果「賃貸に出した方がいい」となったとします。
不動産屋側から見るとこの件をクロージングできれば1件の成約、顧客は問題解決に向けて実行完了となり双方がWin-Winです。
しかし、クロージングできなければ「ただ話しをしただけ」になってしまいます。成約に結びつかなければ営業マンとしても死活問題です。
クロージングをうまくすることで営業活動において営業・顧客どちらにも利益が生まれます。
成約率を上げるクロージングのコツ10選
それではクロージングで成約率を上げるコツを10個ご紹介していきます。顧客が話しやすい環境を整えたうえで取り入れてみてください。
まず商品知識を付けること
まずは商品知識を徹底的に付ける事から始めてください。
「自社の商品なのだから、そんな事当たり前だよ。」
と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、その商品・サービスの細かな部分まで頭に入ってますでしょうか?
スペックや価格はもちろんですが、顧客からのどんな質問にも答えれるくらいの商品知識をつけておく事です。
するとそれが自信につながり、落ち着いてクロージングに向かう事ができます。
BANTを理解する
顧客に聞くべき情報である「BANT」を把握しましょう。
- B(Budget):導入する際の予算
- A(Authority): 決定権を持つ人・決裁者
- N(Needs):企業側にとっての必要性
- T(TimeFrame):導入する時期
この4つの頭文字を取ったものがBANTです。
事前にBANTを揃えておくと、顧客の意思を把握しやすくなり、必要とするであろう情報を的確に提示できます。
B(Budget):導入する際の予算
顧客の予算のことです。
予算をなるべく早い時点で把握する事は大切なことです。この予算から今後の営業をどう行っていくのかが変わってきます。
例えば、顧客の予算の限度があるにも関わらず、それを超えた価格で提案し続けるのは間違っていますよね。
これでは、なかなかクロージングには結びつかないでしょう。
A(Authority): 決定権を持つ人・決裁者
誰が決裁者なのか?ということです。
例えば、車を購入しようとしている夫婦が顧客だったとします。
実は奥さんが決裁者なのに、先入観だけで旦那さんに積極的に営業を掛けるのは考え物です。
決裁者はどちらなのか?を知る事で、決裁者へと積極的にアプローチでき、それがクロージングまでの流れをスムーズにします。
N(Needs):企業側にとっての必要性
なぜ顧客がそのサービス・商品を欲しいと思っているのか?ということです。
このニーズは顕在的なものと、潜在的なものが存在します。
- 顕在ニーズとは表面的なもの=自覚がありながら欲している状態
- 潜在ニーズとは内面的なもの=自覚がないけれど欲している状態
を言います。
顕在ニーズは顧客に聞けばわかることですが、潜在ニーズは本人も自覚がないため掘り当てる事が難しいです。
けれども、潜在ニーズにこそ本質的な必要性が潜んでいることが多いです。
よって表面的なニーズだけではなく、潜在的なニーズを探るのもとても大切です。
T(TimeFrame):導入する時期
いつ(までに)それが必要なのか?ということです。
時期を明確にすることで、商談のスケジュールをおおまかに計画することができます。
導入を急いでいる顧客を前に、ゆっくりと進めていてはスピード感のある他社にとられかねません。
顧客ごとに導入時期はある程度決まっているものですので、この辺りも意識していきたいところです。
顧客に合わせた策を練ろう
当たり前ですが、顧客は年齢も性別も考え方もそれぞれ違って千差万別です。
したがって誰にでもまったく同じようにクロージングしていては、結果が違ってくるのは当然だといえます。
例えば、男性と女性の場合ならどうでしょうか?
一般的に男性はプライドや優位性を好む方が多いといわれています。
そして女性は共感や協調性を重視する方が多いといわれています。
- 男性にクロージングする場合は、プライドを傷つけないように断定しないように自分で決断させるようにする。
- 女性にクロージングする場合は、共感されるようにストレートに感情に訴える。
などといったように顧客ごとにアプローチを変えてみると良いでしょう。
あくまでも傾向にあるというだけなので、実際にはよく顧客の心理を観察し、相手の喜びそうなことをイメージしながらクロージングを行なってみましょう。
契約から運用までの流れを説明する
契約から運用までの流れを説明しましょう。導入後のイメージやサービスに対しての理解度が高まり、成約につながりやすくなります。
運用後のイメージが掴めていないということは、サービス内容を把握できていない可能性があります。
「〇日までにご契約いただければ、○日に契約が完了できます。すると○日には引き渡しまでできますよ。」
このように契約内容や、運用後の流れのイメージを掴んでもらえるように工夫をしましょう。
選択肢を用意する
選択肢を用意しておくことも重要なことです。
例えば松竹梅の法則というものがあります。
価格の異なるサービスを3つ用意しておき、一番売りたいものを真ん中の竹に持ってくると、多くの顧客が竹を購入するというものです。
松 | 50万円 | 売れればラッキー |
竹 | 30万円 | いちばん売りたいもの |
梅 | 10万円 | 売れなくていいもの |
このような選択肢を用意しておくと、ほとんどが竹を選んでしまいます。顧客心理としてはこのような感じです。
「松は高いけど、梅は安すぎて物足りない・・・竹で落ち着こうかな。」
この手法は多くの大手企業も取り入れている強力なものです。
よってクロージングでは売りたいものだけでなく、売れなくて構わないものを選択肢として一緒に提示するのが非常に有効となります。
メリット・デメリットだけでなくベネフィットを提示する
商品・サービスの魅力に加えて、購入することで顧客が得られる「ベネフィット」を理解してもらうことが重要です。サービスの魅力やメリットは販売側の一方的なアピールであり、顧客が必ずしも求めているとは限りません。
ベネフィットとは「商品・サービスを手にする事で得られる幸せな未来」と思っていただけるといいと思います。
ベネフィットを提示するには、顧客の悩みを解決する部分を具体的にイメージさせるのがポイントです。
例えば「こたつ」のベネフィットを考えてみましょう。
こたつのベネフィット
メリットは「あたたかい」「電気代が安い」などだと思います。
そしてベネフィットはメリットのその先の得られるであろう体験を考えます。
「こたつで家族と触れ合う時間が増えた」
「それまで灯油ストーブだけを使っていたけれど、灯油を入れる頻度が少なくなって身体的にも楽になった。」
などがベネフィットとして考えられます。
このベネフィットを伝える事で、顧客はより強くその商品・サービスを手に入れた時のポジティブなイメージを持つことができます。
ぜひクロージングの際はメリットだけでなくベネフィットも合わせて伝えるようにしてみてください。
決断できない理由を無くす
決断するうえで迷いの原因となる「不安」を取り除きましょう。商品やサービスの購入を決断する際、人は以下のような不安を抱きます。
- 他に安い商品があるかもしれない
- もっと良い商品があるかもしれない
- この営業マンを信じて大丈夫なのか
「損をしたくない」という顧客心理ですね。このような不安を想定して、あらかじめ上司に相談し、どこまで値引きできるのかを確認しておきましょう。そうすれば「他店より1円でも高い商品は値引きする」というようにすぐに伝えて顧客の不安を解消できます。
競合他社の商品もリサーチしておきましょう。もっと良い商品がないかと尋ねられた時に、相手が提示した条件より良い商品はないと断言できれば、顧客の迷いがなくなります。
テストクロージングをおこなう
テストクロージングで顧客の購買意欲や意思を確認しましょう。テストクロージングとは、相手の興味・認識を提示した内容とともに1つずつ確認していく方法です。顧客の購買意欲を引き出すことができます。
商談の区切りごとに購入意思を確かめると、その都度、顧客の不安や疑問に寄り添えます。すると、顧客の気持ちを購入に向けて誘導しやすくなるのです。
- ここまでのお話で疑問点はございませんか。
- 商品を○割引した場合、購入の検討をしていただけますか。
- 検討できる場合、いつ頃なら可能ですか。
明確に回答してもらえない場合は、顧客の求めるサービスでない、あるいは魅力が正しく伝わっていない可能性があります。魅力を伝えるだけでなく、顧客に合ったサービスかを確認しながら話しを進めましょう。購入するイメージをもってもらえなければ成約にはつながりません。
タイミングを意識する
クロージングをするのに最適なタイミングは、顧客の購買意欲が高まっている時です。
もし、まだ迷っていたり納得していない段階でクロージングに入ってしまうと、押し売りと捉えられかねません。
テストクロージングが終わった段階で、一旦このままクロージングに入っても大丈夫だろうか?と一度立ち止まって考えてみてください。
もし、感触が悪ければクロージングに入るのは避けて、もう一度テストクロージングに戻すなど仕切り直しを計りましょう。
最後は顧客自身に決めてもらう
最後は顧客自身に決めてもらうという視点も持っておきたいです。
なぜなら、もし無事にクロージングが成功したとしても、顧客は「強引に決められた」と思っているケースがあります。
その場では勧められるままに契約をしたけれど、後になって冷静になり「やっぱりキャンセルで」といわれてはたまりません。
これを防ぐためには、最後は顧客自身に判断してもらうというのが有効です。
すると「最終的には自分自身で決めた事」という心理が働くのでキャンセルやクレームにつながりにくいからです。
クロージングの最終段階でストレートに「あとはお客様がご判断ください。」という言葉を伝えてみてもいいでしょう。
顧客が沈黙して考えている時に、余計な事を話しかけるのはご法度です。沈黙は金と言いますよね。
決断してくれるのを堂々と待ちましょう。
忘れてはいけない大切なこと
ここまでクロージングのコツを伝えてきましたが、忘れてはいけないことがあります。
それは、あくまでも人間を相手に営業を行っているという事です。
まずは顧客との信頼関係を築くことが一番大切なことであり、コツやテクニックだけに頼っていては、それはそれでだめなのです。
もし営業の中に嘘があったとしたら、どこか後ろめたい気持ちが消えずいずれあなたの心を曇らせるでしょう。
顧客との信頼関係を築いていくことによって自然とトークも弾み、後の良いクロージングにつながっていきます。
それがあなたのやりがいにもつながり、本当の意味でのWin-Winになると思います。
正しいクロージングで成約率の向上を目指そう
営業で成約率を上げるにはクロージングが必要不可欠です。
「いつも顧客と会話がはずんで反応もいいのに成約に至らない..」という方は一度クロージングを見直してみましょう。
また、成約率は高いけれど解約率や顧客満足度が低い場合は、クロージングに至るまでのフローも見直してみてください。
契約締結を急ぐあまり、顧客の思いにフイットしていない可能性があります。
正しい方法でクロージングをすることが成約率UPへのポイントです。
参考になりましたら幸いです。